リリースから時間が経っていてタイミングとしてはちょっと遅いですが、長期療養中の藍井エイルさんへの応援という意味も込めて、彼女の現段階での最新シングル「翼」についてレビューをします。

13thシングル「翼」

TBS系列が長年に渡って特別扱いしてきた日曜17時枠アニメでの放映を勝ち取った「アルスラーン戦記 風神乱舞」のオープニング曲として抜擢された、藍井エイルの13枚目のシングル「翼」。その歌声は相変わらず刃のように鋭く、楽曲の世界観を帯びながら圧倒的な存在感を放っている。楽曲は基本的には爽やかなマイナー調のエイトビート曲で、ツインリードギターのハーモニーイントロが印象的でありながら、オリエンタルなガット・ギター風のフレーズが終始織り交ぜられ、剛柔の二面性が絶妙な緩急のなかで共生している。曲構成は非常にシンプルかつコンパクトで、3分25秒という短さだが音数が多く密度が高いので聴いたあとに物足りなさを感じるようなことはないだろう。歌詞は、ほぼアニメ作品のシナリオを参考にしているようで、運命に翻弄されながらも葛藤を繰り返し信念を貫こうとする人間の強さを表現している。こういうシリアスで哲学的なテーマを扱った作品に出会えるのもアニソンのひとつの魅力ではないだろうか。アニソン歌手はその都度、楽曲の世界観またはアニメ作品の世界観を理解して身に纏って歌唱パフォーマンスに反映させる、という高度な表現手法を体現している。藍井エイルは強靭なノドを使った高音での歌唱が魅力であり、その長所を「翼」という希望あふれる力強い楽曲のなかで思う存分発揮しているという点において、楽曲と歌唱が高いレベルで調和した作品になっていると言えるだろう。

オリジナルMV

ミュージックビデオは、アニメ作品の世界観をそのまま継承したような、荒野で彷徨う女戦士のような風貌と彼女の力強い歌声が印象的なビジュアルになっています。藍井エイルの美しく凛々しい外見が、これまた作品の世界観を高めていて素晴らしいクオリティですね。
Youtube – 藍井エイル 13thシングル『翼』Music Video (Short Ver.)

長期療養に至る経緯まとめ

藍井エイルは、2016年5月に13thシングル「翼」のリリース情報を解禁後、6月23日にはYoutubeにてミュージックビデオが公開され、7月2日には北米で開催のAnime Expoに遠征、帰国後すぐに新曲プロモーションを勢力にこなしながら7月20日に新曲「翼」のリリース、7月22日にはミュージックステーションの出演、そして7月24日には中国・上海でのフェスに遠征、8月7日には日本国内のイベントROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016に参加、8月13日にはファンクラブイベントで1日2公演をこなす…という殺人的スケジュールで活動していました。

FCイベントの第2部が終わりました！
ありがとうございました！
さっき写真間違っちゃった
ごめんね pic.twitter.com/Hl2LIJt9MM

— 藍井エイル(あおいえいる) (@eir_ruru) 2016年8月13日

しかしこの翌日の8月14日、藍井エイル スタッフ (@eir_staff) のアカウントからイベントの中止が発表され、

藍井エイル 『翼』発売記念スペシャルイベント及びエイルランドオープン3周年記念 大感謝イベント中止のお知らせ https://t.co/8d4e1yTlv4

— 藍井エイル スタッフ (@eir_staff) 2016年8月14日

8月18日にはついに長期療養の発表がされることになりました。

藍井エイル 重要なお知らせ https://t.co/Lj8eNMakft

— 藍井エイル スタッフ (@eir_staff) 2016年8月18日

藍井エイルの今後は？

療養に専念してほしいと思っているのであまり邪推するつもりはないのですが、ファンであればどうしても気になっている点が2つあります。

1つは、活動5周年を記念した10月19日発売予定のベストアルバムへの影響です。

私、藍井エイル、デビュー5周年記念となる10月19日にベストアルバム「BEST -E-」「BEST -A-」を2枚同時発売することが決定しました‼︎たくさんの方に聴いて頂けますように♪https://t.co/RRQOByAesj pic.twitter.com/j6Slkw7LEB

— 藍井エイル(あおいえいる) (@eir_ruru) 2016年7月25日

ベストアルバムなので既存曲の盛り合わせでリリースできるとは思いますが、国内アーティストの場合、アルバムの販売促進のために新曲を1〜2曲入れて価値を高めることがあります。彼女の現在の状況から考えると、その可能性は限りなく低いと見るべきでしょう。新曲を入れなければリリースはできるがセールスはさほど見込めない、もし新曲を入れるとしたら予定通りにはリリースできない。そういう葛藤が制作サイドにはあるだろうと想像します。

2つめは、これも活動5周年の集大成として予定されている11月4日・5日の日本武道館2Days公演です。

藍井エイル | Sony Music | ソニーミュージック オフィシャルサイト http://www.sonymusic.co.jp/artist/aoieir/live/39930

藍井エイル「Eir Aoi 5th Anniversary Special Live 2016 at 日本武道館」 | Confetti [チケット情報満載] http://www.confetti-web.com/detail.php?tid=35351

ざっと公式サイトを調べた限りでは9月4日現在、この日本武道館2Days公演が中止になったという情報は発表されていません。その先の2017年1月のANIMAX MUSIX OSAKAはキャンセルされているのに、この日本武道館2Daysがキャンセルされていないのは、現在もわずかな可能性を信じてギリギリの調整を進めているか、あるいは制作スタッフが混乱していてうっかりキャンセルの発表をし忘れているか…。個人的には、日本武道館2Daysの実現のために他の予定をキャンセルして可能性を探っているのでは、と思っていますがどうなるでしょうか。続報が待ち望まれています。

ここでひとつ思い出してしまうのは、「銀河の歌姫」ことMay’nの2015年の10周年記念日本武道館公演です。May’nは10周年である2015年に入った矢先、声帯の疾病の影響で急遽長期療養を発表しました。様々なイベントをキャンセルしてしばらく沈黙していましたが、どうにか日本武道館公演は開催し成功させることができました。2016年に入ってからは何事もなかったかのように、また力強い歌声を披露して精力的に活動を続けています。もちろんMay’nと藍井エイルの状況が同じとは思いませんが、どうか藍井エイルにもMay’nと同じように不死鳥のごとく「アニソン界の新歌姫」としてまた羽ばたいてほしいと願っています。（新曲が「翼」だけにね。）エイ、エイ、ルー！